2026-09-30 / 製造業ニュース
製造業ニュース|原価管理、重要鉱物、脱炭素投資
工業製品の原価算出ルール、AI・量子技術を使ったレアアース分離技術の開発、鉄鋼生産の脱炭素投資を、町工場の実務に引き寄せて整理します。
今回は、適正な価格交渉の土台となる原価管理、重要鉱物の供給を支える新しい材料開発、そして素材産業で進む大規模な脱炭素投資という3つの動きを取り上げます。いずれも海外を含む発表ですが、材料費、見積り、調達先、取引先から求められる環境情報など、日本の町工場にもつながる論点があります。公表された事実と、カキタ製作所が考える現場への着眼点を分けてまとめます。
1.重要工業製品で原価算出の考え方を明確化
【ニュースの要点】ジェトロによると、中国の国家発展改革委員会と国家市場監督管理総局は9月3日、重要工業製品のコスト算出に関する通知を公表しました。不合理な低価格競争への対応を目的とし、必要に応じて企業の財務資料や証憑、帳簿などに基づいて製品単位の原価を算出します。複数製品を扱う場合は、区分できる費用を製品ごとに計算し、製品別の算出が困難な場合には業界平均原価を参照する考え方も示されています。中国当局の制度であり、日本企業の国内取引に直接適用されるものではありません。
【町工場への影響・着眼点】制度の適用範囲とは別に、製品別原価を説明できる状態は、日本の町工場にとっても適正な価格交渉の土台になります。材料費と加工時間だけでなく、段取り、工具、検査、不良、外注、梱包、配送まで案件ごとに記録し、見積りと実績の差を振り返ることが重要です。特に単品や小ロットでは段取りと初品確認の比率が高くなるため、量産品と同じ時間単価だけで判断すると採算を見誤ります。値上げのお願いをするときも、増えた費用と改善努力を数字で示せると、取引先との話し合いを進めやすくなります。
2.AI・量子技術でレアアース分離材料を探索
【ニュースの要点】米USA Rare Earthは9月17日、フランスのPasqal、米Riven Systemsと、レアアース分離技術の開発に向けた戦略的提携を発表しました。機械学習、自動実験、量子コンピューティングを組み合わせ、レアアースとの結合性能に優れた分離分子の探索を進めます。小型で、コストとエネルギー使用量を抑えた処理施設につなげることが目標です。現時点では研究開発段階の取り組みであり、商用設備の性能や供給量が確定したという発表ではありません。
【町工場への影響・着眼点】レアアースはモーター、半導体製造装置、防衛関連など幅広い分野で使われ、供給の変化は加工部品の需要や材料調達にも波及します。新技術の実用化をすぐに前提とせず、材料証明書、指定材の入手先、納期、代替材の可否を案件ごとに整理しておくことが現実的です。また、AI活用の本質は答えを自動で出すことだけでなく、実験結果や加工実績を比較できるデータに整えることにあります。町工場でも、材質、工具、条件、寸法結果、不具合を同じ書式で残すことが、将来の分析や条件改善の第一歩になります。
3.日本製鉄が欧州拠点へ約9億ユーロを投資
【ニュースの要点】日本製鉄は9月16日、スロバキア東部のUSスチール・コシツェに、電気炉と酸素プラントを新設するため約9億ユーロを投資すると発表しました。ジェトロの報道によると、電気炉は2030年、酸素プラントは2029年の稼働開始を予定し、新しい電気炉は年間約160万トンの生産能力を持つ計画です。既存の高炉設備と組み合わせ、高品質鋼材の安定供給と二酸化炭素排出量の削減を両立させる方針です。
【町工場への影響・着眼点】素材メーカーの大型投資が、直ちに国内の鋼材価格や調達条件を変えるとは限りません。一方で、取引先が製品単位のCO2排出量や材料の由来を確認する動きは今後も広がる可能性があります。町工場では、まず購入材料の鋼種、仕入先、ミルシート、重量、歩留まりを確実にひも付けることが有効です。電力使用量や材料廃棄量を毎月記録し、設備更新や工程集約で何が減ったかを説明できる状態にすれば、環境対応を大げさな宣言ではなく、品質管理と原価改善の延長として進められます。
今日のまとめ
今日の3つの動きに共通するのは、見えにくかったものを数字と記録で確かめることです。製品別原価、材料と加工条件の実績、素材の由来と使用量を整理しておけば、価格交渉、技術改善、環境情報への対応を同じデータから進められます。新しい制度や技術をそのまま追いかけるのではなく、自社の見積り、加工、検査、出荷の記録をそろえることが、変化に強い現場づくりにつながります。